ケータイ小説 野いちご




「じゃーな、行ってくる」

「いってらっしゃい。っていうか今日はどこ行くの?」

「海!」



答えたのと同時に扉が閉まる。ちゃんと聞こえたのか?

まあいいか、と思い直して、時計をポケットに入れる。予想通り外は吐くほど暑い。

気象予報士はまだ「今年一番の暑さ」発言をしてねーのに。



「……俺死ぬかも」



これ年々暑さ増してないか?

相変わらず蝉の自己主張は激しいし、人が集まるイベントの数も増えた気がする。俺の夏嫌いも変わらねーし。



「あー……、」



ため息を一つだけ吐いて、歩き出す。


それでも、だ。

俺がいて家族がいて、そしてニーナがいて。嫌いな夏もきらめく海も、俺の好きなことやニーナの好きなものも、全てが重なり合ってこの世界がつくられているのだとわかったから。



「……元気かな」



俺はこうして外に出て、この炎昼でも笑っていられる。






容赦ない日差しを照り返すまっすぐなコンクリートの道。遠くで聞こえるさざ波の音。それに混じる透き通った歌声。



季節は巡って夏休みである。

俺たちの世界に、新しい夏がきた。





FIN.

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