「…もう、イヤです!…二度とここには来ません…!」

閉じられてた目が見開いた途端、大粒の涙が頬を伝った。
手首を掴んでいた力が緩むのを受けて、ヤツが俺を突き飛ばした。
ベッド下にずり落ちる俺を見て起き上がる。
そのままの状態で、ヤツは叫ぶように言った。

「…私…図書館やめます!今まで…お世話になりました!!」

悔しそうに恨めしそうな表情を浮かべてた。
明らかに怖い顔をしてた筈なのに、何故だか、すごく綺麗に見えた……


滑るようにして立ち上がり、俺の方を振り返る。
背中の真ん中辺りまである髪が広がって、更に美しさを感じさせた。


「……さよなら…」


飛び出した言葉に愕然となった。
キュッと噛みしめた唇を緩めることなく、ヤツが背中を向けて走り去った。



「リリィ……!」


思わず名前を呼んでいた。
閉まるドアの音が部屋中に響いて……



……カクン……


膝の折れるような音がした。

でも、折れたのは、膝じゃなく…


…心の…方だった…………