「いらねぇの?折角開けたのに?」



うざっ。


梅干ちゃんを目の前でクルクル移動させる彼方にむぅと唇を尖らせると、



「んじゃ俺食ーべよーっと!」



梅干しちゃんを片手に「よっこらせ」とソファーへ腰を下ろした彼方。


スプーンで梅干しちゃんをすくって「あーん」と口を開ける。



それを見たあたしは、「彼方!」と呼び止めた。



「ん?」


「やっぱ食べる!!」


「じゃあ?」


「……チッ。分かったよ」



やればいいんでしょ!


自ら罠にハマった可哀想な凛音ちゃんは、不満を露にしながら彼方の元へと寄っていく。


梅干しちゃんをテーブルの上へ置き、両手を大きく広げる彼方を見て立ち止まった。


それ、なんか嫌なんですけど。



満面の笑みであたしを待ち構えている彼方に悪寒がして。


そんなあたしを、煌は満面の笑みで見ていた。



ちょっと!変態彼方から助けてよ!


こんな時、壱さんが居てくれたら絶対助けてくれるのに……。


壱さーん!ヘルプミー!!




……と叫んでも助けてくれる訳もなく。


仕方なく足を踏み出す。



よし。犬だ。

彼方を犬だと思おう。


ただの変態犬だと思ったらいいんだ。



「りっちゃん、お手」



──ポスッ。


「お?」


「……ってあたしが犬になってどうすんだってえぇぇぇぇぇぇ!?」



自分にツッコんでいると、“お手”をした手をいきなり引っ張られ、気付いた時にはくるりと半回転し、彼方の膝の上へと座らされていた。