「はぁ…」

立ち上がってキッチンに向かう。
コトコト煮えてるお鍋の中身は『ホワイトシチュー』

隣のリクエストと被ってる。
真夏にシチューなんて…と思うけど、この間「食べたいな…」とあの人が漏らしてたから…。


(…どうする……?持ってく……?)

ほぼ出来上がってる。
もう少し煮込めばいいだけ。それくらいなら、きっとルナにもできる。


(…あーあ…人がいいな……私も……)

鍋ごと抱えて部屋を出る。
隣のドアの前で深呼吸。

ピンポーン!

(……なんて……押せない、押せない…!)



コトッ。

ドアの前に鍋を置く。
小脇に抱えてた料理本を下敷きにした。
そのままメールする。

『ドアの前を見なさい!』


微かな足音が聞こえてくる。
さっ…と部屋に帰った。

「わぁ〜!」

驚いたような声が上がった。
その声を聞いてほっとする。

ルナの作る物なんて、アテにできない。
お腹を壊されて、図書館が閉まっても困る。

(あくまでも自分の為。あの人の為じゃない…!)

変に自分を納得させる。
そのまま、もう一度、買い物へ行った。

駅近のスーパーは、丁度安売りの時間帯になってた。
今更もう料理なんてしたくない。
自分は軽く食べとけばいい…。

サラダと南蛮漬けを買った。
それから明日の食材も。


(明日は何食べたがるだろ……)

食材見ながらついつい気にしてる。