「自分で作りなさいよ」

一応突き放す。癖になってもイヤなので。

「ええ〜でも〜、ルナよりもお姉ちゃんの方がお料理上手だし〜…」

舌ったらずな言い方で甘える。
甘え方も上手。
私が男性だったら、絶対にほっとかないタイプ。

「…仕方ないなぁ…もう!…」

そう言いながらも作り始める。
この子といい、緒方さんといい、私はどうも人に頼られると弱い人間みたい…。


「お姉ちゃん…サンキュー!」

やっさし〜…だって。困った妹だこと…。


…今夜は隣からの指令はなし。
昨夜、大きな修羅場が済んで、緒方さんは久しぶりにゆっくり眠ってる筈だから。

(一昨日はすごく疲れてるみたいだったし、十分休めてるといいけど…)

電気ケトルのお湯が沸くまでの間、彼のことを思い出した。
普段は忙しくて自分の時間が欲しい…と思う程こき使われてるのに、ほ…っと時間が空くと、つい気になってしまう。

殆ど寝ずに仕事をしてる緒方さん…
…きっと、図書館の仕事なんて、してられない程忙しいと思う…。


(…どんな漫画描いてるんだろう…?)

彼の原稿を見せてもらったことはない。
見せてもらったことがないと言うより、見せれない…という感じに近いものがあるらしい。


アシさんによれば…

「リリィちゃんが見たらソットーする!」

…が、理由。

ソットーするような漫画……私には想像もつかない。
…そもそも、あまり興味がない。
本に描いてある挿絵ですら、ほぼ無視状態で読んでるような人だもん。