いちいちと頭のうえに手を置かれるのはしゃくだけど…まあ、あの2人には聞こえていなくてよかった。

あたしが女だと知っている従業員は、藤本さんと黒崎さんの2人だけなのだから。

「今日は遅いから掃除が終わったら車で家まで送ってやる。

明日からはちゃんと1人でくるようにな。

時間は9時だ、いいな?」

そう言った藤本さんに、
「はい、わかりました」

あたしは返事をした。

「よし、話は終わりだ。

着替えが終わったら呼べよ」

「はい」

もう1度藤本さんに返事をすると、あたしはホールを後にした。

また明日1日働いたら、明後日は定休日だ。

兄貴が帰ってくるまでの辛抱だと言い聞かせながら、あたしは更衣室へと足を向かわせた。