(……あて字かよ…)

履歴書を持ってきた時、一番最初にそれを思ったのを覚えてる。

でも奴は……

「本が大好きで、ここの図書館には、高校時代から通わせて頂いてました。いつか本に囲まれて仕事がしたい…と願って、大学で司書の免許も取得しました」

本が好き過ぎて、司書にまでなってしまった女。
普段は、髪を一つに縛り、色気も何もねぇ顔つきで仕事してるが…


(ふぅん…今日はまぁまぁイケてるじゃん…)

スッピンに見えてたけど、そうじゃなかったらしい。
でも、寝ボケてた俺にはそう見えた。
…そして、隣り合わせに住みだしたこいつに、俺のこの超多忙なスケジュールを手伝わせてやれ…と、心が動いた。



「……入れ!」

図書館では、決して見せなかった俺の素顔。
それを知ったからには、もう、絶対に離さねぇ!

「はっ……⁉︎ 」

キョトン…としてやがる。
何も知らねぇってことは、本当に罪作りだぜ。

「…いいから!…中に入れっ!!」


細っこい腕を引っ張った。
ふわっと髪から漂う花の香り。

忘れかけてた女の匂いにフラつきながら、俺はこいつを部屋に引っ張り込んだ。
部下だろうが、隣人だろうが、都合良いことには変わらねぇ。

…とにかく、今の俺には時間がねぇんだ。

こいつを使って、少しくらい時間の余裕を持っても、バチは当たらねぇ…!


家事一般、全部任せてやる。
いざ、訴えると言い出したら、『責任は取る!』と言ってやる。