「新人…賞⁉︎ 」

電話口の向こうから聞こえる声に唖然とした。
鳴り響くコール音の向こう側からかけてきた人物は、「そうです!」と大きく息巻いた。

「緒方さんの描かれたものが、弊社の新人漫画賞に選ばれました!おめでとうございます!今後のご活躍、期待しておりますっ!!」

(ちょ…ちょっと待てよ…!)

…言葉を呑み込んだ。

これは長年、俺が描いてた夢だ。


『大好きな漫画で一発当てて、大金持ちになる…!』

…ガキの頃のからそう言ってたじゃねぇか。

それが、今、叶おうとしてる。
それ以上に幸せな事なんて、俺には絶対訪れねぇ!


「…あ、ありがとうございますっ!これからも精進しますっ!」

外ヅラ良く返事した。
電話をかけてきた雑誌の編集者は、「来月行われる表彰式に是非参加して下さい!」と日時を知らせ、電話を切った。


「…やっ……やりぃぃっ!!」


電話を切って、声を張り上げた。
店内にいた客が驚いて振り向く。
そんな様子を気にしてなんかいられねぇ。

ひどくワクワクしてる。
興奮の度合いも半端ねぇ。

(…やった!これでもう働かなくて済むっ!一生、大好きな漫画だけ描いて、食っていけるっ!!)

手を握りしめて、ガッツポーズした。


……それは今から、ざっと二年半前のことだ……