「笑う・・・、笑うとは、さっきの顔のことか?」

「え?」



先を歩いていた白玖が、囁くように呟いた。
顔をあげ白玖の背中を見上げる。




「あ・・・、えと。そうだね」

「笑うとは、どういうときに笑うのだ」

「どういう時・・・。嬉しかったり、楽しかったりした時・・・かな?」

「嬉しかったり、楽しかったり、というのはどういう時だ」





まるで、なんでも知りたがる子供みたいだ。
人の感情に、少しだけど興味を示しているのか。
そう思うと、少しうれしかった。




「嬉しかったり・・・。そうだな、さっきのでいえば、志多良が心配してくれたのは嬉しかったし、白玖が私の手当てを頑張ってしてくれたのを想像して嬉しくなったの」

「そんなことが、嬉しい、なのか?」




怪訝そうな瞳を向けられる。
理解はできていないらしい。
そんな簡単にわかるわけはないか、と蒼子は息を吐いた。





「じゃあ、泣くときは」





白玖の視線が蒼子を真っ直ぐにとらえた。