それでも、私には知識がなかった。

クエイトの邸で四年を過ごしたが、その間に外へ出たのは数えるほど。

私には、彼のもとへ帰る手段がない。

手段を知る、機会がない。

…機会をつくる、術も知らない。


そのことに私は、焦りを感じ始めていた。





「エルガ・ラルドス。あなたに『届け物』です」


そんなある日の、雨上がりの朝だった。

長いローブに身を包んだ『彼ら』が、この奴隷屋を訪れたのは。


「…………」


怪しい、と思った。

同じような格好をした、背の低い二人組。

彼らは深くフードを被っていて、テントの中にいる私には、顔が見えない。

…『届け物』?

客ではないのか。

けれど、この二人組に驚いているのは、私だけのようだった。