「白玖さま、戯れの相手はお選びくださいませ」




天が帰っていった後、着物を正している白玖に多々良が進言する。
そんなことを言われるのはいつものことだった。




「あれは、野孤。誰も彼もと受け入れるのはおよしください。白玖さまは高貴なお方、誰彼かまわず触れ合っていいお方ではないのです」




何事にも興味を示さない。
その代わり、来るものも拒まず成すがまま。

物事の成り行きにも、そこにある感情にも興味はなくただ流れるままに生きる。




そんな白玖をあるべき場所に引き連れていくのは多々良の役目だった。





「どうでもいいよ、そんなことは」





そしていつだって白玖はそう告げて逃げるように出て行くのだ。
何度も繰り返されたやり取りに、多々良は一つ息を吐く。


あのような白玖の態度に、不満を抱く妖怪たちも少なくはない。
だからこそ、これ以上問題を起こすわけにはいかないのだ。


ましてや、大妖怪である白玖に下等な人間がかかわっているなどと知れたら・・・。
そのためにも、あの娘の事は隠しておかなくてはいけなかった。