「あなたの身体がもつ程度でよろしい。白玖さま自体にも治癒能力はありますので」

「・・・」



妖の身体は、人間とは違うので、そう続けられる。
ならば自分は必要あるのかと。
むだになるであろうそんな疑問は口には出さなかった。


目の前に横たわる大怪我を負った人。
人ではない妖だが、見てしまえば助けたいと思ってしまう。

その力が自分にあるのなら。



それに、こうすることしか選択肢はないのなら、するしかないのだと。




蒼子はそっと白玖の身体に触れる。
荒く息をしている白玖の身体は、酷く冷たい。




そっと目を閉じ、集中する。
自分の中に流れ込んでくるイメージを浮かべると、徐々に痛みを伴いながら傷口が蒼子の身体に移っていく。




「っ」




蒼子の着ていた制服が、赤く染まっていく。
痛みに立っていられず足から崩れた。


慌てて手を外す。
蒼子はそのまま意識を手放し倒れてしまう。