委員長は葉菜を伴って資料室に入ると、後ろ手に内鍵を閉めた。
 鍵の閉まる音に、先に資料室へはいらされた葉菜が慌てて振り向く。

「なっなにするの!」

 するとレンは、閉めたばかりの扉に寄り掛かって、腕を組みながらゆっくりとビン底メガネを外す。その動作は優雅で高貴な雰囲気さえ感じる。そして外されたメガネの向こうに端正な顔が現れた。そのマリンブルーの瞳と目が合うと、忌々しいことにドキリと胸が跳ねる。
 レンは葉菜を見つめたまま学ランの胸ポケットにメガネをしまい、背筋をスッと伸ばした姿勢で堂々とした足取りで近付いていく。
 狭い資料室の窓側まで逃げて、逆に追い詰められたことを葉菜は悟った。綺麗な曲線を描く眉を持ち上げたレンが勝ち誇ったような笑みを浮かべ、窓と自分の間に葉菜を挟む。彼女の顔の横に片肘をついた。覆いかぶさるレンが、厚く高い壁のようにそびえ立ち、まるで追い詰められたねずみのような気分に陥った葉菜は身動き一つできなくなる。端正な顔が近づく。

「そんなに怯えるな。お前の友達に怪しまれる。あくまでも今まで通りにしろ」

「お、怯えてなんか……」

 確かに恐いし、苦手ですよ。
 だけどそれを口にだそうものなら、どんな罰が待っているか、予測もつかないからいえるわけないんですってば。
 心の中で強く反論しているとレンがとんでもないことをいいだした。

「それともオレを意識してるのか」

「なっ? なんでそうなるの! 冗談じゃ―――」

 顎を上向かされて言葉が止まる。一層近づいた青い瞳がますます鮮明に見えた。吸い込まれそうなマリンブルーの瞳に魅入られる。
 このごうまんちきの言動に流されないようにしなくちゃ。瞳が綺麗だからって、その誘惑に負けちゃだめなんだから。誓ってもう変なことはさせないんだから!

「素直になれ。そしたら抱いてやる」