───それは、もうすぐ付き合って一周年を迎えるという、春休みのある日のことだった。




その日はひどく冷え冷えとしていたことを、よく覚えてる。




桜のライトアップが綺麗なスポットを調べた俺は、陽向をデートに誘い、待ち合わせ場所である駅前に立っていた。




何を見に行くかは内緒にしてるから、陽向の反応が楽しみすぎる。




目をキラッキラに輝かせて、喜ぶかな。




そんな陽向を想像すると、思わず頬が緩んでニヤける。




やべぇ、俺キモいじゃん。




油断しないように顔に力を入れ、陽向の到着をひとり待った。




だけど、一向に陽向の姿は現れない。




最初は、おっちょこちょいの陽向のことだからバッグか何かを家に忘れて戻ってるんだろう


なんて考えてた。




でも暗くなっても、どれだけ大勢の人が目の前を通り過ぎても、俺が待つたったひとりの君は来ない。




妙な胸騒ぎを覚えた。