大樹が首を傾げて問いかけてきたとき、後ろから歩いてきた男性の腕が私の肩に軽く触れた。それに気づいて大樹が私の手を取り、神社の石畳の歩道から木立の方へと引っ張っていく。大きな木の下に来て大樹が手を離したので、私の手のひらから温もりが消えた。

「言いたいことがあるなら今聞く。まだ結月の好きな林檎飴も食ってないし、俺もイカ焼きを食ってない。このまま訳もわからないまま帰りたくない」

 大樹の顔に大きな木の暗い影が落ちていて、高二とは思えないくらい、大人っぽく見えた。中学生のときはクラスの男子と一緒によくふざけていて、「大樹ってお子様よね」って女子に言われていたのに、今の彼は、私よりずっと背が高くて、ときどき口角を片方だけ上げて、大人びた笑顔を見せる。カジュアルなボーダーのTシャツに黒い麻のシャツを羽織った彼は、大学生と言っても通りそうだ。

「だって」

 それに引き替え、背も低くていまだに中学生と間違えられる私は、子どもっぽく〝だって〟を繰り返す。

「だって?」

 大樹が私の顔を覗き込んできた。いつの間にこんなに背が高くなっちゃったんだろう。身長差が開いた分、心の距離も開いたような気がする。

 今日は落ち着いた濃紺に白百合の柄の浴衣を着て、髪もアップにして、うんと大人っぽくしてみたのに。大樹は一言もほめてくれない。