ケータイ小説 野いちご

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in the クローゼット


「じゃあ、私そろそろ行くね。舞の家に寄らなきゃいけないから」

「おう。暗くなる前に帰れよ」


 私は稲葉よりも先に教室を出た。
 稲葉ももう教室に用事なんてないんだけど、一緒に教室を出たりしない。

 必要以上に仲良くするような男女なんて、恋人同士しかいないんだから。

 少なくともクラスのみんながそう認識している。
 だから誰かに仲良くしているところを見られるわけにはいかない。

 私と稲葉が恋人同士だなんて、そんな誤解は私たちを深く傷つける刃にしかならない。
 わかりきっていた。

 クラスのみんなから注目されるような真似もしてはいけない。
 あれこれと詮索されるわけにはいかない。

 もし、秘密を暴かれでもして――……
 みんなに侮蔑の眼差しを向けられたら、きっと私は生きてはいない。

 だから本当は、こうして稲葉と二人っきりで喋っているのも危険だとわかっている。
 いくら放課後で教室に人が寄り付かないって言っても、部活とかで学校に残っている子は多い。

 電話やメールじゃ物足りない。
 直接顔を見て話をしたい。

 外で会うよりは、まだ言い訳が立つしだけマシだった。

 私と稲葉が一緒に居るようになったのは、とても自然なこと。
 舞が好きな私、青山が好きな稲葉。
 そんな自分を偽らなくてもいいのはお互いだけだから。

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