「……よし」



結び終えたネクタイを正し、ソファーに置いていた鞄を持ち上げる。



「……じゃあ、行ってくる」

「うん、いってらっしゃい。今日も遅いの?」

「多分。文化祭の準備、強制参加だから」

「そっか、頑張ってね!今日、6時から降水確率80パーセントらしいから、傘持って行ってね」

「わかってる」


エプロン姿で手を振る美生に見送られ、家を出た。

降水確率80パーセントだなんて言うわりに、広がる空には雲ひとつなかった。





「……」

「……」



放課後、小看板を作る俺と芹沢の間に、会話は殆どない。

話すことと言えば、ここの色はどうだとか、この書体はどうだとか、そんなことだけ。