この温もりを突き放す余裕なんて、今の俺にはなかった。



「……っ」



小さな美生を、力の限り抱き締める。

壊れてしまわぬように、優しく、だけど強く。



なぁ美生。

境界線ってどこなんだ。

どこまでが赦されるんだ。

今の状態は、線を越えているんじゃないのか──そんなことを思いながら、全てを遮ってきた自分が、人との関わり方について考えていることに気付く。



「……」



苦しさしかなかった世界に訪れた小さくも大きな変化に、今更ながらに戸惑うしかなかった。