ちゃんと言う事を聞けば、お母さんは満面の笑みを浮かべた。


「ほら、体温計。そういえば最近あの子とはどうなの?」

「ん?」


体温計を受け取ると、頭がぼぉっとしてきた。



「廣クンよ!小さい頃から大好きって言っていたじゃない」

「あ…もう別れたから」

「え?」



驚くのも無理はない。

お母さんはいつも、あたしと廣クンが結婚すればいいと思っていたから。




「本当は好きだったのかも知れない。

やり直そうと思っていたのに……、何でか逃げちゃった…」




あんなにも泣いたくせに、涙はまた零れてしまう。

あたしってば、本当に弱虫―…。




「逃げてもいいんじゃない?」

「……え?」


お母さんは綺麗な髪をふわりと揺らして、そのままあたしの布団に座った。