その時アイツは何故だか微笑んでいた。

それに妃鞠はずっと俺の事が好きだったと言い出した。



全く意味が分からず、きょとんとしてしまう。


妃鞠ですら、意味が分かっていない。



俺はアイツが殴りかかるのに気づいて、妃鞠を離した。


頬に思い切り殴りかかっても、痛みを感じなかった。

妃鞠が離れるって思ったときよりも、全然痛くなかった―…。



「…俺は許せないんだ、君を…」



この男は、俺が憎いと言った。復讐をするとも言っていた。


でも―…初めて言われてから、どう思い出しても、俺には心当たりがない。



泣きそうになるこいつを見れば、俺はどうすることも出来なくなる。



知らない間に、名前も分からないオンナと遊んだのは確かだった。

でもコイツが言うオンナは身に覚えがない。





―本当にこの世にはいないのなら、俺だって覚えているはずだから。