「ちぃちゃんはその結婚を望んではいなかったよ」

「え、でも・・・」

「政略的なものだ。あいつはちぃちゃんに入り込んでいたみたいだけど」




政略的な・・・。
昔ってそういうのが多かったんだろうな。
それでも、時光は千代さんの事を好きになった。



「それに、ちぃちゃんは鬼羅の事が好きだった・・・」

「琉鬼!」




琉鬼くんの言葉を鬼羅がかき消す。
でも、聞こえてしまった。

鬼羅の事が好きだったって・・・。
鬼羅に、抱きしめられたことを思いだす。




「・・・鬼羅も、千代さんのことが・・・」

「貴様には関係のないことだ」

「そうだけど・・・」

「姿が似ているだけ。貴様は千代ではない。余計な詮索をするな」




はっきりと言い捨てる鬼羅に、少し胸が痛んだ。
千代さんには優しかったんだろうか。
笑顔を見せたり、したんだろうか。