「まっ、あくまで可能性ですが」


修二のそんな言葉も、動揺している守の耳には一切入ってこない。


感染するかもしれないのに、そんな奴に近付きたくないと感じるのは誰しも思うことだ。


が、倒れた由里子に近付けるのは、由里子の隣に位置する守か哲夫しか居ない。


「そうかもしれないが、血を避けたら問題ないだろう。私が行くよ」


哲夫のその言葉に守がホッと息を吐き出した。


倒れている由里子へと近付く哲夫。


由里子が吐いた血はかなりの量だったのか、彼女の広がった血を避ける為に慎重にゆっくりと歩いている。


そして由里子の側まで来ると、その場に屈み、倒れている由里子の首へとそっと手を伸ばす。


ジャラッという鎖の音が自棄に響く。


由里子の首へと宛がわれた哲夫の手。


脈を測っているのだろう。


少し経つと哲夫の手が首から離れ、スッと残りの3人へと顔を向けた。



生きてるのか?

死んでるのか?



そんな思いと共に守がゴクッと息を呑む。と、同時に、哲夫が口を開いた。


「多分。……死んでるよ」


最後に顔を俯かせた哲夫の言葉に手が震える。