「加藤、お前そんな余裕ないのかよ。やっぱり自信ないんだな。俺に取られるんじゃないかって。」


「それを言うなら志賀さんこそ。俺達が確実に愛を育んでいる事知らないんですか?」


「えっ、そうなの?」


すかさず私が言うと


「それ、わざと?」


さっき志賀から貰ったばかりの言葉を今度は陽日から貰う。


「えっ……わざとって訳じゃないけど……まだ育んでは無いよね?」


私の答えに深いため息をつく二人。


お互い苦労するよなとかなんとか言い合ってる。


結局、この二人って気が合うのかな。


「兎に角だ、来週の金曜日、飯行くぞ。今回は加藤抜きだ。後で連絡する。じゃ俺行くわ。」


デキる営業マン志賀は今日も慌ただしく社食を出ていった。


「沙紀さん、行くの?」


「ねぇ、ここでその呼び方は止めてよ。」


「良いじゃんそれくらい。何もここで押し倒してキスしようって言ってる訳じゃないんだし。」


「はぁ?当たり前でしょうが。何、ふざけた事言ってるのよ。」


「来週の金曜日って……げっ、俺、出張の日じゃんか。」


「出張?」


「日帰りだけどね。だけど帰り遅くなるからなぁ……。さては志賀さんわざとその日、狙ったな。」


「そ、そうかしら。」


「まぁ、食事くらい良いですよ。だって沙紀さんからキスしてくるくらい今じゃ俺に夢中ですもんねぇ。」


「ちょ、ちょっと何言ってるの。変な事、言わないの。」


いくら昼時でざわついている社食とはいえ、陽日がいるだけで目立ってしまうのに。


おまけにそんな事を誰かに聞かれたりしたら………ああ、恐ろしい。


「でも、本当の事じゃん。温泉であんなにも熱い熱い口付けを………」