「……っ」

有理の魂が朽ちた気配を悟り、黒斗は屋上に向かう足を止めた。


「……先を越されたか……」

諦めたように呟き、上っていた階段を下り始める。



確かに感じた“死神”の気配も消えた。

死を司る神である、死神達には人の生死をコントロールする能力が備わっている。

先程感じた死神の力は、人間に自殺を唆すものだった。


自分が言えた義理ではないが、死神が必要以上に人間の生死に影響を与えるべきではないと考えている黒斗は、死神を止めようとしたのだが……間に合わなかった。



もともと有理は不安定な状態であり、いつ自ら命を絶ってもおかしくはないと思っていたが、死神が関与しているなら話は別だ。



(……誰かは知らないが、いつか必ず落とし前をつけてもらう)

今は気配を感じなくなった死神へ、黒斗は心の中で呟いた。