「俺は、エルガ・ラルドス。この店のオーナーだ。お前の名前を訊いてもいいか、新入り」 美しい真っ赤な髪を揺らして、彼女は泣いた。 大粒の涙を流しながら、小さく口を開く。 「私は」と言った声は、この二日間でいちばん強い意志を持ったものだった。 「ロジンカ。私の名前は…ロジンカよ」 この薔薇の少女が、愛しい檻の中から初めて外へ手を伸ばした、その瞬間だった。