───「……なた! 陽向!」
「……いやっ!」
誰かの声が聞こえたのと、私が叫び声を上げたのは同時だった。
ばっとベッドから起き上がると、お母さんが心配そうな顔で、私の顔を覗き込んでいた。
「陽向、大丈夫!?
頭を抑えて、すごくうなされてたのよ?」
段々とはっきりしてくる意識。
あぁ、私、夢みてたんだ。
……待って、違う。
夢なんかじゃない。
あれは、事故で失った私の記憶───。
「お母さん、私、思い出した……。
事故に遭った時のこと……」
「え……?」
私には、事故の直前の記憶がない。
だから、事故が起こった時のことを思い出したのは、これが初めてで。