ケータイ小説 野いちご

カルナック戦記




ーー元来、この広大な世界には人間と動物、そして人ならざるものーー『トイフェル』が共存していた。

トイフェルの種別は多種多様で、ドワーフ(小人)、ドライアド(妖精)に収まらず、ガイアス(魔物)と呼ばれる恐ろしい見かけのものまで多く存在している。

それでも先人達は各々が絶妙なバランスを保てるよう工夫しながら生きてきたのだ。


ーーしかし時代の流れとはときに酷烈なものである。

三種族のバランスを見事に崩壊させたのは、科学文明の最盛期に生きた愚劣な人間達だった。


強大な魔力を持つトイフェルを通して受け継がれてきた魔法ーーいわば人間とトイフェルの絆の証のような大切な代物を捨て去り、人は完全なる科学主義そして人間主義に生きた。


魔術を忌まわしいもの、"野蛮"なものと見なした人間は、自分達が自ら選んだ運命の方がどれだけ忌むべきものかを知ろうとしなかったのだ。


一度沸き起こった欲望は止まることを知らない。

便利さをひたすら求め続けた人間によって、トイフェルの住処である美しい森や泉はあまりにも簡単に潰えた。

球が坂道を転がるように、自然は大地から姿を消していったのである。


そして決め手は世界大戦だろうかーー。


世界のあちこちで夥しい数の核兵器が使用され、最早人々の眼中に無意味な争いに勝つことしか無くなったときには、既に大半のトイフェルが生きる場所を奪われていた。




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