翌日の朝



ピピピピピピ

スマホのアラーム音で目覚めた黒斗は、身支度を整え、静かなダイニングに降りていく。

「…………」
予想通りダイニングには誰もおらず、テーブルの上には何も乗っていない。

朝食もとらずに黒斗は家を出て、ある場所へと向かった。








「鈴ちゃん、学校はええから、朝ご飯だけでも食べや?」

部屋に引きこもったままの娘に声をかける珠美だが、返事は返ってこない。

「……テーブルの上に置いとくから、食べる時はレンジでチンするんやで」

深い溜め息を吐きながら珠美は部屋から遠ざかっていった。



(……おかん、堪忍な)

ベッドに横たわる鈴は心の中で母親に謝罪の言葉を述べる。


(…………リン…………)

今は亡き愛猫の姿が頭から離れず、また涙が溢れる。





カーテンが閉まったらままの鈴の部屋を、黒斗は外から見つめ、やがて踵を返して立ち去った。

(立ち直れるかどうかは、あいつ次第だ)

そう思いながら、黒斗は1人で学校に向かった。