やっぱりわたし、襲われる……っ!

けれど、胸に抱えていた例のスケッチブックをドサリと床に落とし、引き戸なのにドアの要領で押してしまって勝手に美術室に閉じ込められて焦っているわたしに、百井くんはいたって普通の調子で言う。


「ここの整理、したいだけなんだけど。埃で汚れるから制服は脱げって、そういう意味」

「……」


こんの、言葉足らずっ!


「……へ、へぇ。わた、わたしもそうなんじゃないかと思ってましたけどなにか!?」

「なんでキレんの」

「うるさいですよっ」


ていうか、なんなの!

美術室の整理をしたいんなら最初からそう言って連れてきてくれたらよかったのに、どうして百井くんはこんなにも言葉が足りないのだろう。

また変に覚悟を決めて損したじゃないか。

パシリと今のと、ふたつぶんのわたしの覚悟返せ。


「あ、あれ……?」


けれど、息巻いていられたのも、ほんの一瞬だった。

気が抜けたのか、あれよあれよという間に足に力が入らなくなり、最後には精いっぱいの抵抗も虚しく、わたしはその場にへたり込んでしまう。

これは、しばらく立てそうにない……かもしれない。