そうだよ。


わたしだって一年の時のクラスメートの名前は全員覚えてる。


その中には話したことのない人も何人かいたけど、記憶にはちゃんと残ってる。


それなのに、覚えられていないって……。


よっぽど印象が薄かったか、嫌われてたか。



「ほら、あいつ勉強出来ないしさ! 歴史の人物とかも全然覚えないから」



「はぁ? 歴史の人物とクラスメートは全然違うでしょ、バカ」



「ぐっ……アンちゃんの毒舌が胸に突き刺さる〜!」



ダメージを食らったような顔で、大げさに左胸を押さえるキヨ君。


やっぱり……キヨ君はなんだか憎めない。


愛嬌のある笑顔が、傷付いた心を少しだけ包み込んでくれた。



「うるさい、バカ」



「もういいよ。高野くんにとって、わたしはそれだけの存在だったってことだし」



気持ちを伝えようとしたこと自体、まちがっていたのかもしれない。


頭を打って現実が見えた。


むしろ、これで良かったじゃん。



ーーキーンコーンカーンコーン



「やば、じゃあ戻るね」



予鈴が鳴って、わたしは逃げるように自分の席に戻った。


これ以上話してると、どうしようもなく胸が苦しくて。


どうにかなってしまいそうだった。