「そいつが振ってくれて、俺としてはラッキーだけどな」



「なんで……?」



耳元で聞こえる声にドキッとする。


離して欲しいのに、久間君はさらに力をギュッと込めてあたしを抱き締めている。



「堂々と志帆を狙えるから。ま、そいつと付き合ってたとしても堂々と狙うけど」



は、はい……?



「俺はお前にゲンメツなんてしねーよ」



「く、口では何とでも言えるよ」



実際のところはわからないでしょ。


もうね、信じられないんだよ。



「明日11時にモミジ公園の入口に集合な」



「は?え?」



どういう意味?



「待ってるから絶対来いよ」



え?



「じゃあ帰るわ」



久間君はサッとあたしから離れると、そのまま部屋から出て行ってしまった。