父が書く小説のジャンルはサスペンスやミステリーで、母が書く小説のジャンルは官能。

 両親は原稿ができたらこぞって俺に書いた小説の内容を聞かせた。

 俺に聞かせ始めた時期は俺が2歳だったとき。

 どう考えてもサスペンスやミステリーや官能小説なんて、2歳児に聞かせる物語ではない。



 前に一度、「息子に聞かせる暇があるなら物語書けば」と両親に進言したことがある。

 両親はその言葉を聞いて非常に憤慨していた。

 曰く、「息子に聞かせるくらいの休憩はほしい」とのことだった。

 俺に内容を聞かせることによって自分で物語を整理し、かつ休憩しているらしい。

 ある意味作家馬鹿な両親だと思った。

 馬鹿だと言ったら案の定反撃を食らったが。

 「私たちのおかげで話すことも書くことも他の家の子たちより随分早かったし、何より読書好きになったんじゃない」と言われたときは、さすがに反論はできなかった。