「工藤先生、書く気全く無さそうでしたよ。」

『やる気のない作家をやる気にさせんのが編集者の仕事だろうが。』

「………。」


編集長の正論に、未熟な私は何も言えない。

だって、だって、……工藤先生よ?

あのオネェだよ?――ビジネスだけど。


や、やっぱり無理だよ。

ここ一週間、先生の巣には一度も通ってないんだから。

一週間前に新作の話をしに行って――い、色々あったあの日から、一度も。


『いいか。工藤先生が原稿を書き上げるまで、先生の申し付けは全部快諾しろよ。』

「……え。」

『お前、もろに嫌な顔すんじゃねーよ。』


嫌な顔したくもなります。

あの工藤先生の言うことなんて、ろくなことがないことを編集長も知っているだろうに。


『明日から、ここには来るな。来たって俺がお前をつまみ出す。』

「…そんなに私をクビにしたいんですか、編集長。」


ショックだ。

止めの印籠を渡すの、いくらなんでも早すぎだろう。

これがドラマなら、もうちょっと引っ張るよ、このシーン。