外は雨が降ってた。

突然、彼はずぶ濡れのまま帰ってきて。
私はタオルを何枚か掴むと、彼についた水滴を落とすことに夢中で。

彼の顔をあまり見てなかった。

ああ、鼻をすすってる
早くあったかくしてあげないと。

「ふ、服着替えないと…」

精一杯で、頭の中が上手く回らなくて
まず何をすればいいのか分かんなかった。

私の言葉に彼が応えないのも
なんら不思議に思わなかった。

「ま、まずは髪を拭い…て」

でも、今だからハッキリ分かるの。


ーーー彼はその時から泣いてたんだ。


「…どう、したの?」

彼は何も応えなかった。
不安で私が泣きそうになった。

ーーーでも、

泣かないように

彼に、心配かけないように

堪えたの。

その瞬間。

彼は涙と雨で濡れた目を細めて

ーーーひどく、悲しい顔をした。