『それで、今日は何?昨日あげた原稿にミスでもあったの?』

「えっ、いえいえ!いただいた原稿は、きちんと納めさせていただきました。」

『そう♪ならいいの。』


玄関でパンプスを脱いで、リビングに続く廊下を先生を先頭に歩いていく。


「あの、コレ…どら焼きです。よかったら、どうぞ。」


本題の前に、買ってきた差し入れを渡す。

とりあえず、機嫌を上げないと。


『あらー!私の大好物♪茉子ちゃん、よく分かってるわぁーっ』

「わわっ」


目の前に差し出されたどら焼きにテンションアップしたらしい先生に、ガバッと抱き付かれる。

い、息苦しい…。

この瞬間が唯一、私に先生を男と感じさせる瞬間だ。


「あのっ、先生?」

『なぁに?』


息苦しい中でも顔を先生の方に見上げると、先生の笑顔が目の前にあった。