ケータイ小説 野いちご

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。

たとえば。





「ねぇねぇ、百合」




「んー?」




「今日、石丸さんいらっしゃると思う?」





ほんのりと頬を紅潮させて、恥ずかしそうに訊ねてくる千代。




彼女は、この鶴屋食堂の常連さんである石丸さんのことが気になるらしいのだ。






「そうだねぇ、いつも日曜には彰……佐久間さんたちと一緒に来るから、きっと今日も来るんじゃない?」





「ふふっ、やった。

ねね、あとで、百合に用事があるふりして訪ねてきてもいい?」





「分かった、それまで石丸さんたち引き止めとくね」





「ありがと! あぁ、持つべきは友ね!」





こんなふうに、現代の人と変わらず、普通に恋をしたりしている。




だから、戦時中とはいえ、日常生活を送る人々の様子はあんまり違いがない。




まぁ、そこかしこに





『贅沢は敵』




『欲しがりません、勝つまでは』





………なんていうスローガンが書かれた貼り紙がしてあるのを見ると、自分が今、戦争をしている国にいるんだ、って実感するけど。







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