「………ばっかじゃない?」





気がついたときには、あたしはそう呟いていた。





「なんでそんなことしなきゃいけないの?


そんなことになるくらいなら、戦争なんか、初めからやらなければよかったんだよ」





言ってから、彰の気分を害してしまったかな、と思って、彰の顔色を窺う。




あたしはこういうふうに、思ったことをそのまま口に出してしまうという悪い癖がある。



相手の気持ちも考えずに。





でも彰は、少し苦い笑いを浮かべただけだった。






「………確かに、そうかもしれないな。

戦争なんて、やらなければよかったんだ。

たくさんの命を失って、たくさんの人を苦しめて………」






彰は悲しそうな声で語った。



彰も、誰か知り合いを戦争のせいで失ったりしたんだろうか。






「…………でも、始まってしまったからには、勝たなくてはならない。

負けてしまったら、これまで以上に日本は悲惨な状況になるだろう。


戦勝国に占領されて、何もかもを奪われて、兵士たちは捕虜となり、一般市民も奴隷のような扱いを受けてしまうんだよ。

俺の弟や妹も、百合もツルさんも………。


そんなことは、考えただけでも恐ろしくて仕方がない。


だから、そうならないためにも、俺たちは、日本軍は、何としてでも勝たなくてはならないんだよ」