今は代わりに雷也が医者になるように、両親に言われているくらいだ。


 雷也も言っていた。兄貴は親を裏切ったおかげで半ば、勘当されているようなものだと。家に戻って来ないのではなく、来れないようだ。

 
「電車乗る前にどこでご飯食べる? 愛梨が昨日決めたから、今日は僕と龍ちゃんで決めようよ。いっせーので行く? 愛梨、コールして」

 
 雷也は愛梨に問いかけた後で、オレの目を見て微笑んだ。



「えっえっ? いっせーのって何? あたし、が言えばいい……? いっせーのっ!」




『アメ横の定食屋っ!!』



 ハイ、一発で決まった。


「えーっ!! あたし、定食なんてイヤだよ、二人はハモって気持ち良さそうだったけど……」



──『バッ』



 オレと雷也は、同時に駅に向かって走りだした。


 無理矢理連れて行くならこっちの方が早そうだ。


 たまに行動が被るのが、オレと雷也の程よいコンビ具合を示しているのかも。


「ちょっ!! ちょっと!! 待ってよ、置いてかないでよっ!!」

 
 オレ達はそのまま改札を抜けて山手線に乗り込んだ。


「はぁ、はぁ……少し走っただけなのにもう息が切れてるなんて、僕達も歳なのかな」

 
「歳じゃなくて、雷也は運動不足だって」


「龍ちゃんのバカーッ!! 階段で足挫(くじ)いちゃったよ!! もし次の本戦が1回戦の時のような走る種目ならどうするの!?」