葵の一件で少しは慣れたとはいえ、愛梨には愛梨の魅力がある。


 幼馴染なので葵ほどドキドキはしないが、こう伝えがたい安心感がある。


「嫌い……じゃないけど、幼馴染だから……こう、なんていうかドキドキとかそういうのは無いかな」


 愛梨はオレの目をじっと見つめる。


 正直、愛梨が可愛いのは十分過ぎる程知っている。


 学校でのモテっぷりに、街を歩けば若い男達は振り返ってスタイルの良い愛梨を見直す。

 
 ただ、いつの頃からか……中学校の時くらいからお互いに異性として意識をし始めた気がする。


 昔は鬼ごっことかよくしていたのにな。


「じゃあどうすればドキドキする?」


 寄りかかり、上目遣いでこちらを見る愛梨の目線に対してオレは瞳を閉じた。

 
 甘い罠を無視して、その姿勢のまま店員さんを呼ぶ。


「はーい、お待たせしました」


 30代くらいの女性がキッチンから現れ、エプロンで手を拭いた。女将さんというには歳が若い。


 良く見渡すと室内は木張りの床に、机も木で出来ている。アンティークカフェというのはこういうお店のことを言うのかな。



「えっと、オレンジジュースと、愛梨は何にす…っ!」


──『チュッ』