「今から携帯の電源は絶対に切るな。そのカプセルは携帯電話を切ったらすぐに発動する仕掛けになっている。

いいな、電源だけは切るなよ。詳しい話は『モバイバル管理事務局』からメッセージで届く。楽しかったぞ、生きてたらまた会おう」


 好き勝手に話すオッサンだ。


 だが、軽く物事を話したその口調が……事態の重さをより鮮明に表していた。


──嘘10割

 
 そう信じたい。


 だけど、こうも世の中の移り変わりを見せられると、全て本当の事に思えてくるんだ。


──『プップー』


 ご丁寧に『さよなら』のクラクションを鳴らし、運転席からこちらを見ずに手だけ振ってきた。


 ふざけた『プロ』の車は、夜の闇へ吸い込まれていった。