「最高だな、お前は!!」


 慶兄はそう言うと立ち上がり、大きく背伸びをした。


 ベンチから見上げた慶兄は一段、大きく見えた。


 背後に背負う月が迫ってくるような感覚を受ける。


「龍、後事は任せたぞ。お前ならやっていける。人より不幸をしょいこんだ分、周りの人間をカバー出来るほど大きくなってる。

この俺が、霧島慶二が言うんだ。間違いないは絶対に無い」


 吹かしたタバコの煙が、周りの空気を巻き込み弾けた。


 そして夜空へと緩やかに解けて天へと還った。何か憑き物が昇華されたように。


 霧島慶二の人柄を象徴するような煙の行く末を、オレは見上げていた。


 一瞬、時間が止まったような感覚の後で、慶兄の声がハッキリと聞こえてきた。



──これから


──何があっても


──傷つく覚悟で


──受け入れて抗(あらが)え


──龍一には開く真実の扉が


──出口へと続く扉が見えるから


──携帯を持った事が無いお前なら


──きっと、それが解けるはずさ