奥に籠って暫くすると、樹達が帰っていったのが分かった。





カラン、カラン

あれ、誰かやってきた。



「響〜。親父からここに瑠奈が居るって聞いたんだけど……
まさかのガセネタか??」

この声………

「いやいや、ガセじゃないから。
瑠奈、出て来れる?」

ひびの優しい声に、奥からこっそり顔を出した。


「あ………裕(ヒロ)くんっっ」

思わず、声を出していた。

「何だ、ちゃんといるじゃないか。
そんな所にいてどうした?
瑠奈……おいで?」

久しぶりの低音ボイスに涙腺が緩んだ。



「裕くんっっ」

久しぶりの再会が嬉しくて、抱きついた。
香水のシトラスの香りが鼻を燻った。

「裕くんの匂い」

「ハハッ。俺の匂いって……瑠奈は犬みたいだな」

大抵のことは笑って吹き飛ばしてくれる裕くんは、ほんと懐の深い、大人の男性だ。

「裕くんの傍は安心する……」

思わずポツリとこぼれた言葉を裕くんが拾い損ねる事はなかった……

「ん?誰かの傍は安心しないのか?」

「……っっ‼︎‼︎ いや、そうじやなくて……」

裕くんや、昔から知ってる人に問い詰められるのは苦手。

上手く言い訳出来なくなるから…