「先生、プリントを持ってきました」

「ああ、野々宮か。お疲れさん」

「いえ」



担任の先生に渡したのは、各自希望した学部の講習会を受けた際に書かされた感想のプリント。

みんなの第一希望から第三希望までを聞いて、そこからどの学部の講習会にするかを先生たちが決めたんだ。



私が集めなくてもいい気はするけど、それはまぁいつものことだから仕方がない。

先生というのは、委員長を雑用係のような扱いをすることがしばしばあるのだから。



「野々宮はいつもしっかり仕事をしてくれて助かるよ」

「ありがとうございます」

「大変だろうし、誰かに手伝ってもらってもいいんだからな」



意味深な言い方。

ようするに、クラスの人ともう少し親しくしろということ。



でも、先生。

そんなのは今さらで、とてもじゃないけど無理ですよ。



こんな面倒な奴の仕事なんて、誰も手伝いたくないもの。






「失礼しました」



ガラガラと職員室の扉を閉じて、ため息をこぼした。



開いた掌を見つめ、ぎゅうと握り締める。

彼とわずかに触れあった自分の手が、特別なものになったと感じてしまう。



教室へと戻りながらも、力を緩めることはできなかった。