……通じてねえな。
 話がかみ合っていない気がする。

 ならば…

 俺は自分を指差して、「レ、イ」と自分の名を言う。

 彼女も理解してくれたようだ。

 「レイ?」

 名前を呼ばれた瞬間、何かが俺の躯を雁字搦(がんじがら)めにしたような感覚に陥った。

 心臓が音を立てる。

 「…ああ、そうだ。俺の名前だ。怜。お前は?」

 彼女は少しだけ首を傾げたが、すぐに名乗ってくれた。

 「カロッサ=ザンドラヴル」

 俺が聞き取りやすいようにとゆっくり放たれたそれは、俺の中にスッと入ってきた。

 「カロッサ…?名前は聞き取りやすくて助かった。………お前に似合う名前だ」

 無意識のうちに、笑っていたようだ。
 俺は表情を面に出すことは滅多にないが、彼女には別なのか。




 つくづく面白い。