??SIDE



「今この世界には数えきれないほどの《ヒト》が存在している。その誰もが住んでいる場所、環境、性別に性格、しゃべっている言語に信仰しているもの・・・挙げていくとキリがない位、他人とは違う所を・・・所謂『個性』を持っている。けど、根本的に構造的に考えれば皆それぞれ等しく≪ヒト≫という種族であり、それ以上でもそれ以下でもない。・・・というのが一般的で無意識にも脳にインプットされている共通意識であり周知の事実だ。・・・だが、それは本当に真実で間違いがないと言い切れるのだろうか?本当はそうでもあるしそうでもないかもしれない・・・誰にもどれが事実なの真実なのか分からないし理解しえていない・・・。例えるなら・・・私たちでいう『猫』と同じだろうか?ほら、猫の種類っていっぱいあるだろう?三毛猫、マンチカン、アメリカンショートヘアー、スコティッシュホールド・・・どの子もとても可愛くて愛らしくて柔らかくて!!・・・挙げていけばこれもまたキリがないほどにたくさんいて、ちゃんとした種族としての名前がある。のにかかわらず私たちはまとめて『猫』とよんでいる。それと同じ。つまりは、私たち《ヒト》は《ヒト》とひとくくりに称されているが実際は違う。《ヒト》は生物的に分けられることが可能で《ヒト》は一つではないし一つでもある存在なんだ」



まぁ、これらは全て個人的な考えだからお勧めはできないけど



男はゆったりとした口調でいかにもというような胡散臭い話をまるで物語の語り手のように語る

誰かがいるわけでも聞いているわけでもないというのにまるで誰かに語りかけるように淡々と、坦々と一定のリズムでテンポよく・・・その声は彼がいるこの廃工場によく響いた



「・・・だからこそ、一つにしようと躍起になる」



無駄なことなのにねぇ?と口元に手を当て上品にくすくす笑いながら呟く



「知らない奴らは本当に幸せだよねぇ?だって、周りにいる《ヒト》と自分は違うかもしれないなんて疑わずに済むし・・・」




―― 何よりこの戦いに巻き込まれなくて済む ――




よくよく見れば男の周りには『何か』が多数倒れており、赤い鉄臭い液体も飛び散っていた
男の頬にも自身のものとは違う赤黒い『ソレ』が付着していた



「さぁて、この戦い・・・どの《ヒト》が勝つんだろうねぇ?」



そもそも私の生きているうちに終わるかどうか・・・
男は至極楽しそうに愉快そうに廃工場の出口へと歩を進めた