佐伯恭也と、中原慶。


 言うならば彼らは、アタシの理想の具現化だ。


 毎日たくさんの人、友達に囲まれて、楽しそうで。


 そんな生活から離れたアタシの目には、彼らが特別輝いて見えた。


 容姿だって、周りから一目置かれていて、なんの苦労も知らなさそうで。


 憧れと同時に嫉妬も抱いた。


 卑怯でズルい考えで2人に近づいて、前は当たり前だった生活がまた戻ってきて。


 だけど、アタシの最初の理想と本当の理想。


 いや、望みと言うべきなのか。


 それが食い違っていたことに初めて気がついて、大事なことにも目を向けることができた。


 アタシはやっぱり性格だって悪いし、この2人が恋した宮下ちゃんみたいな可愛い女の子には到底なれそうにないけれど。


 ずっとほしかった“友達”が、長い間、本当は隣りでそっと待っててくれたこと。


 遅かったかもしれないけれど、それに気づくことができて、笑い合うことができる。


 アタシにとって唯一の友達がこの子。


 この子にとってもアタシがそうであるように。


 ひとりで待っていてくれた彼女に、今度はアタシから歩み寄ろうと思う。


「卒業しても、」


 言いかけた言葉は、面白いくらい同時に重なって。


 2人で声を出して、泣きながら笑った。


                       【end】