怖かった。

隆太郎のいない毎日を過ごすことが。

あの日抱き締めてくれた君のぬくもりが離れてしまうことが。

だから、隆太郎の夢を受け入れられなかった。

離れることを考えるだけでこんなにも痛いなんて。



「峰は……不安?」



隆太郎の問い掛けに、小さく頷く。

泣きたくなんかないのに、隆太郎を困らせるだけだって知ってるのに、涙が次々と流れてくる。

そんな私を隆太郎は──



「……っ」



いつかと同じように引き寄せた。



「不安なんて俺が消してやる、なんてかっこいいことは言えねぇ」

「……」

「大丈夫、なんて勝手な考えを押し付けたこと反省してる」

「……っう」

「でも、まだ半年ある。半年の間に不安を埋めるくらい、同じ時間を過ごそう。離れてても、あのときあんなことがあったなって思い返して笑い合えるような、そんな時間を」



このときの私達に、別れるという選択はなかった。

不安は消えなかったけど、隆太郎の言葉が嬉しくて、胸に沁みて。

私は何も言わずに隆太郎の体に腕を回したんだ。