クラスの違ったその2人を見かけるのは、移動教室の時くらい。


 友達なんていない。


 ほかのクラスに遊びに行く理由もない。


 だから、一週間のうちに数回、その姿を見られるだけで内心舞い上がったりしていた。


 いつも一緒にいる隣りで笑う彼女と、「今日もかっこよかったね」なんて、囁き合って、笑って。


 それが毎日の楽しみで。


 ひっそりひっそりと、アタシは2人のことを見つめていた。


 彼らに群がる女の子は、いつ見ても綺麗な人ばかりだった。


 それは校内で人気ナンバーワンと称されるほどの美人の先輩だったり、学年で1番可愛いって言われている女の子だったり。


 彼らが歩けば取り巻きがついて回っていて、アタシはそれを少し悲しくなりながら、ただ見ているだけだった。


 純粋な気持ちで、こんなに人に惹かれたのは初めてのことだった。


 恋愛感情として彼らのことを見ているか、と言われたら、それはひどく曖昧で。


 それじゃあただの憧れか、と聞かれたら、それも違うような気がしていた。


 自分で自分の気持ちが分からなくなったのも、この時が初めてだった。