チラリと大家さんを見ると、ニコニコ笑って、
「それだよ、それ。そういう事だから」
手を軽く上げてドアを静かに閉めた。
そ、ばっか使ってんじゃねえ!
って言葉は大家さんだから控えとくよ。
折角の日曜日に叩き起こされたのも手伝い、不機嫌MAX。
取り合えず手元の紙に視線を落として、文字を読む。
【この度当アパートを取り壊す事となりました。誠に勝手ではございますが……】
「本日28日より90日後迄に退去願います……?!はあ?取り壊し?!」
思わず手にした紙に力が入る。
90って何?三ヶ月じゃダメな訳?!
てか28日って?
今月の28?いや、先月は31日あった。
だから……
「今週の金曜日じゃん……」
頭が真っ白。
強く握った紙が床に落ち、お尻がペタンと冷たい玄関に着く。
数秒後、ハッと我に返り、散らかった部屋にバタバタと戻る。
通帳、通帳……
家探さなきゃ。
お金は……
小さなタンスの右上を引き、中から通帳を手に取ると、直ぐ様残高を確認した。
最近無駄遣いしてないし、結構あったよね?
「にじゅう……にまん……」
良かった。お金は何とか足りる。
でも……
家に電話しなきゃだよ、ね。
……仕方ないよね。いやだなぁ。
気が重いけど、事が事だ。
携帯を手に取り、電話帳から自宅を出し、通話ボタンを押した。