一翔side

梨華が突然大声を出して走っていた。

(俺…なにかしたのか?)

「一翔さん。何かしたんですか?」

店を取り終わった浅緋が帰ってきて一翔に言う。

「いや…なんも…」

「一翔…女を泣かすなよ。」

全はそう言った。

「泣かしてねぇよ…。けど…あいつは他の女と違う気がするんだ。」

俺はそういい梨華が走った方向に足を進めた。

「え!?一翔!?ちょ…どこに!?」

香清はそういい俺を止める。

「梨華を追いかける。」

「待てよ。無駄だって傷つけるだけだ。」

全はそういい俺を座らせた。

「無駄…?てめぇここがどこだかわかって言ってんのか?」

「一翔…やめろ…」

全はそう静かに言う。

「ここには敵対している族も少なくはねぇんだぞ!?
全部が同盟族とは限らねぇんだ!こうしてる今も梨華がどうなるか…」

「お前はずっとそんな女を探してたんじゃねぇのか?」

「!」

「一翔…お前はずっとこういう状況に置かれても尚、
自らの力で切り抜けられる女を探していたんじゃねぇのか?」

全の言うとおりだ。
俺が探していたのは他の族に拉致されようが自分の力で俺のところに戻ってくる…そんな女をずっと探していた。